概要

ヨーロッパやアメリカのみならず、オーストラリアにニュージーランド、南米、南アフリカ、中国・韓国など、今や世界各国に国際コンクールは存在します。独立してまだ比較的日の浅い東欧では近年特に、芸術発展に尽力しようとコンクール開催に力を入れている国が多く見られます。
世界三大コンクール 世界三大コンクールと呼ばれ、いつの時代も音楽を志す若者から羨望の眼差しを浴び続けているのは、エリザベート王妃国際音楽コンクール(ベルギー)、チャイコフスキー国際コンクール(ロシア)、そしてショパン国際ピアノコンクール(ポーランド)です。
 エリザベート王妃国際音楽コンクールは、ピアノ、ヴァイオリン、声楽、作曲の4つの部門があり、毎年1部門ずつ開催されます。過去には、内田光子(1968年/ピアノ)、神谷郁代(1972年/ピアノ)、堀米ゆず子(1980年/ヴァイオリン)、若林顕(1987年/ピアノ)、仲道郁代(1987年/ピアノ)、諏訪内晶子(1989年/ヴァイオリン)、松本和将(2003年/ピアノ)など、数々の日本人入賞者を排出しています。
 チャイコフスキー国際コンクールは4年おきにロシアで開かれ、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、声楽の4つの部門で競われます。第14回目の2011年は、ロシア出身の世界的指揮者ゲルギエフ氏のもとおこなわれた、「コネとカネ」を排除し公正な審査を実現するための改革に対し、一定の成果を上げたことが記憶に新しいところです。これまでに、諏訪内晶子(1990年/ヴァイオリン)、佐藤美枝子(1998年/声楽)、上原彩子(2002年/ピアノ)、神尾真由子(2007年/ヴァイオリン)と複数の日本人優勝者が誕生しました。
 エリザベート王妃国際コンクール、チャイコフスキー国際コンクールとは対照的に、ショパン国際ピアノコンクールはその名の通り、ショパンの故郷ワルシャワを舞台に5年に一度繰り広げられる、ピアノ部門に特化したコンクールです。日本は第3回の原知恵子から始まり、第5回田中希代子、第7回中村紘子、第8回内田光子、第10回海老彰子、第11回小山実稚恵、第12回横山幸雄、第13回宮谷理香、第14回佐藤美香、第15回関本昌平、山本貴志と、コンスタントに入賞者を世に送り出しています。
コンクールの種類と特徴 上記の世界三大コンクールのように、長い歴史と伝統を兼ね備えたコンクールのほか、新しい才能を発掘するためのコンクールや幼児・子どものためのコンクール、アマチュアを対象としたコンクールなど、海外でおこなわれるコンクールの種類はさまざまで、またそれぞれに独自の特徴を持っています。
■主催者  国や地方自治体をはじめ、独自に組織した運営委員会、各種NPOや団体、音楽教育機関などがコンクール主催者としてその名を連ねています。さらに後援として、公的機関と複数の音楽関連企業が関わります。歴史的に権威あるコンクールでは、コンクール開催が国家規模の大事業であることが多く、地元の人びとのコンクールにかける思いも並々ならぬものがあります。
■開催場所  大抵は、著名な音楽家と縁のある地が開催場所として選ばれます。
■開催頻度  大きく分けて、毎年、隔年、数年に一度と間隔は違えども定期的に開催されるものと、開催時期の決まっていない不定期のものがあります。
■開催部門  ピアノ、弦楽器、管楽器、古楽器、打楽器、声楽、作曲、指揮、デュオ・アンサンブルなど、各種専攻を対象としています。一部門のみか、あるいは複数部門開催かは各コンクールによって異なります。 ■対象年齢  参加者に対し、年齢制限を設けているところがほとんどです。通常多くのコンクールでは、ピアノやヴァイオリンなど弦楽器は16歳から25歳くらいまで、金管木管打楽器は30歳くらいまで、成熟するのに時間がかかると言われる声楽は35歳くらいまで、作曲や指揮に至っては、年齢の上限がもう少し高めに設定されています。そのほか16歳未満のジュニアコンクールや、熟年の方でも受けられるシニアコンクールもあります。

挑戦する5つの理由

アンドビジョンが、あなたのコンクール出場を全力でサポートするのには理由があります。海外のコンクールはひとりひとりの音楽家としての芽を大きく育ててくれる場であり、海外でこそ光り輝く人もいることを、私たちは信じているからです。
世界で花開かせる個性  海外のコンクールでは、技術面も大切ですがそれ以上に、個々のパーソナリティの輝く演奏を求められます。「先生がこう言ったから」ではなく、「あなたはどう弾きたいのか」を正面から問われる。これから先、ひとりの音楽家として生きていくには、常に自分自身で音楽と向き合い、対峙していかなければなりません。揺るがない音楽の軸を持ち、自分らしさを追求していく場としての、海外のコンクール。眠っていた個性を大きく花開かせるチャンスです。
世界で知る自分の立ち位置  世界を知ることは、自分を知ること。海外のコンクールは、世界における今の自分の立ち位置を確認できる良きバロメーターです。国内とは言葉も環境もまるで異なる海外で、時には予期せぬ事態に遭遇しながらも、自分の演奏に精一杯集中する。それは結果的に厳しい現実を、一見、手の届きそうにない世界の標準を、目の当たりにするものであるかもしれません。しかしその一方で、思いのほか高評価な自分に、はたと気づく瞬間でもあるのです。
世界でつながるネットワーク  海外のコンクールには、世界中から同じように音楽を志す若者たちが集まってきます。ほとんどの場合、審査は一般公開されるため、ヨーロッパなど音楽が暮らしに根づいている土地では、音楽好きな地元の人びとが熱心な聴衆となって、コンクールを盛り上げます。反応も実にダイレクト。演奏を聴いてよかったと思えば素直に、拍手や激励の言葉が飛び交います。一方審査員の先生方も、時には聴衆の一員になったかのように楽しむ姿勢を見せ、結果発表時には鋭くも温かなアドバイスをくれます。日本にいては出会えない人と出会える。海外のコンクールは、一生の出会いを演出します。
世界で見つける次の目標  海外のコンクールを機に進むべき方向性が定まり、曖昧だった自分の将来像がはっきり見えてきたと、多くのコンクール出場経験者は語ります。それは、審査員の先生方からの親身なアドバイスのおかげだったり、参加者同士が良きライバルとして互いに刺激しあった結果だったりもしますが、加えてたとえ短期間でも、海外という非日常の空間に身を置いたことがもたらす、心情の変化であるようにも思えます。日常に埋もれてしまいがちな夢や目標。ぜひもう一度、掘り起こしてください。
世界で広がる活躍の場  芸術の世界であっても、コンクールが勝負の場であることはやはり、否定できません。入賞や優勝という「結果」を引き寄せるためには、運や巡り合わせまでをも味方につけなくてはならないでしょう。結果如何によっては、国内外での演奏の機会が増えたりするのもまた、事実です。優勝して、大勢の人の心に自分という存在の足跡を残す。もちろん、参加するにはみなさんそこをめざすわけですが、優勝できなくても、たった一握りでも相手の記憶に残る演奏をすることが、まずは第一歩ではないかと考えます。その初めの一歩が、いずれは世界に広がる活躍の場へとつながっていると感じられたなら、あなたの音楽家としての未来はきっと、明るいはずです。

コンクールの選び方

 星の数ほどある海外のコンクール。その中で、自分に合ったコンクールを選ぶためのコツを、いくつかご紹介します。
プログラムで選ぶ  当然ながら、一番重要なのはプログラムだと、出場経験者たちは口を揃えて言います。プログラム規定は原則、各コンクール要項に記載されています。今自分が勉強している曲が生かせるか、これから広げていきたいと思うレパートリーのものがあるか、自分自身の音楽性や感性に合うかどうかなど、検討する要素はたくさん。要項をきちんと読み込み、何か不明な点がある場合には、コンクール事務局に納得するまで問い合わせることが大切です。わずかでも規定に合わない曲を選んでしまうと、それだけで失格となってしまいますので、曲選びは慎重に。
 また、同じ曲でも楽譜のエディション(版)によって奏法に違いが出たり、ショパンコンクールのように、中にはコンテスタントが使用すべきエディションを指定している場合もあります。要項の記載をよく確認した上で、楽譜は信頼できるエディションを選びましょう。
日程で選ぶ  プログラム同様、慎重に検討すべきは日程の問題です。コンクールの日程と、それからコンクールまでの準備期間がどれくらいあるかを見据え、学生の身であるならば学業との関連を、社会人であるならばその時々の仕事状況と照らし合わせて考える必要があります。さまざまな事情で止むなく出場を見合わせる場合には、次回の開催がいつになるのかを把握しておくと安心です。
年齢制限で選ぶ  興味のあるコンクールが複数あってそれぞれに日程が重なっていたり、似通った時期におこなわれたりする場合にかならず確認しなければならないのは、各コンクールが定めている年齢制限。次回開催時には、年齢制限に引っかかって出場できないなんてことが、実際に起こり得る可能性があるからです。どのコンクールを優先するのか、まずは長期的な見通しを立てましょう。
審査方法や審査員の顔ぶれで選ぶ  コンクールによって審査方法や審査の基準、審査員の顔ぶれは異なります。自分が納得できる、あるいは共感できる審査の仕方をしてくれるのかどうか、また審査団の中に、特に自分の演奏を聴いてもらいたいと思う先生がいるか、一国でなく複数の国から招聘されたインターナショナルな審査団であるかなども、受けるか受けないかを決める際の要因のひとつです。
第三者に相談する  最後に、どうしても迷ったときには思い切って、私たちのような第三者に相談してみませんか? アンドビジョンでは、個別カウンセリングを通して、海外のコンクール出場に向けたプランニングとコンサルティングをおこなっています。錯綜する情報の数々に惑わされないために、そして何より、自分の演奏に100%集中できる環境づくりのために、プロの手を借りることをぜひ、ご検討ください。

審査の流れ

審査方法や審査の基準については、コンクールによりそれぞれ違いがあるものの、一次審査→二次審査→セミファイナル→ファイナル→結果発表→入賞者記念ガラコンサートという審査の大まかな流れは、基本的に変わりありません。 審査  予備審査として事前にDVDやCDによる録音審査を実施するコンクールと、一次審査の段階からすべて現地でおこなわれるコンクールとがあります。どちらの場合も審査は一般公開され、会場には地元の音楽ファンの姿がしばしば見受けられます。また近年では、コンクールの模様をインターネット配信するところも増えています。
プログラム  バロック、古典派、ロマン派、近現代と時代別もしくは作曲家別に指定された曲群の中から数曲ずつ、好きなものを選んでプログラムを組み立てるのが一般的です。30〜40分のリサイタル形式で演奏することもあれば、楽章や演奏箇所をその場で指示され、曲の一部のみを披露することもあります。繰り返しの規定などの詳細は、各コンクールの要項を見て確認してください。大きなコンクールのファイナルともなれば、オーケストラとの共演でコンチェルトを演奏することが多く、さながら本物のコンサートのような熱気と雰囲気に包まれます。
順位  何位までを受賞者もしくは入賞者とするかは、コンクールによって異なります。通常は1位、2位、3位を受賞者として表彰し、以下4位から10位くらいまでを入賞者とします。しかし状況によりけりで、「該当者なし」と言って1位や2位を出さないことも珍しくありません。そのほかに審査員特別賞や時代別楽曲の演奏最優秀賞、聴衆賞、主催者賞など、各種の賞が別途設けられています。
賞金と副賞  数万円から数百万円までとその金額には幅がありますが、賞金は現地の通貨あるいはドル建てで授与されます。と同時に、ベーゼンドルファーのグランドピアノや留学スカラシップ、世界各地へのコンサートツアー契約、場合によってはCDデビューが約束されるなど、魅力あるさまざまな副賞が用意されています。
入賞者記念ガラコンサート  コンクール入賞者は、審査に続いておこなわれる入賞者記念ガラコンサートに出場できます。ガラコンサートの模様は、コンクール審査同様、世界中にネット配信されたり、地元のテレビやラジオの中継が入ったり、新聞や雑誌などで大きく取りあげられたりします。自分の存在を全世界にアピールするにはまさしく、これ以上ないチャンスと言えるでしょう。

コンクールに出場するには

いざ、出場するコンクールが決まると、練習以外にも、さまざまな準備や用意が必要なことに気づきます。すべてを自分自身でおこなってももちろん結構ですが、本番をできる限りストレスなく迎えるために、かつ、自分の持てる力を本番で120%達成するためには、第三者に任せられる部分は委ねるというのもまた、賢いやり方です。
申込書類を揃える  コンクール要項に記載されている申込書類一式を揃えることから始めます。参加申込書と証明写真、身分証明書のコピーなどの基本書類に加えて、参加動機書や履歴書、推薦状を用意しなければならない場合もあります。なお、これらの書類は必要に応じて現地の言語、あるいは英語への翻訳を依頼します。すべての書類が完成するまでには意外に時間がかかります。ぎりぎりまで放置せず、早め早めに準備しましょう。 
 申込書類は期日までにコンクール事務局に郵送するのが通例ですが、近頃は、参加申込書をはじめとする各種指定の用紙が各コンクールのウェブサイトからダウンロードできるようになっていたり、書類の提出までもがオンライン化されているところも増えつつあります。
録音審査のための録音準備  事前に録音審査があるコンクールでは、要項の記載に従い、CDもしくはDVDなど規定の方法で演奏を録音し、事務局へ発送します。DVDを使う場合には特に、「フォーマットはDVD-Video」「リージョンコード2、またはリージョンフリー」「コピーガードなし」と言ったような細かな録画指定に注意してください。リージョンコードが違うと、映像を現地で再生できなくなる恐れがあります。
伴奏者の手配  コンクール事務局がオフィシャル伴奏者を用意しています。オフィシャル伴奏者を希望する際には、参加申込書の伴奏者の欄にその旨忘れずに記入してください。
 伴奏者の方とは当然ながら初対面のため、相性やコミュニケーションの取り方の問題など、「こんなはずじゃなかった!」と思うことが、もしかしたら出てくるかもしれません。しかしそれも長い目で見れば、音楽家としての臨機応変さが身についたり、自分の音楽に対する引き出しを増やすようなことにつながる可能性もあります。
 第一、伴奏者を自分で帯同している人以外は全員、同じ条件のもとで各自演奏のすばらしさを競います。自分だけが問題を抱えているわけではないことをぜひ、頭に入れておいてください。
 なお、自分で伴奏者を日本から伴って行く場合には、伴奏者分の航空券や宿泊などの手配と、諸経費もすべて自己負担です。渡航前から何度も一緒に練習ができ、精神的余裕が生まれるとは言え、金銭的負担は大きくなります。
 アンドビジョンでは、地域によって現地伴奏者を手配できることがありますので、ご興味のある方は事前にお問い合わせください。
日本語通訳/英語通訳の手配  現地の言葉に対してどうしても不安があるのならば、通訳を手配することを考えなくてはなりません。英語圏以外の国で、日本語通訳を見つけるのが難しい場合には、代わりに英語通訳を探します。契約は大抵、一時間単位。当日拘束した時間数分の費用が発生します。
 アンドビジョンでは、現地日本語通訳の手配をおこなっておりますので、ご希望の方はぜひご相談ください。
現地練習場所の確保  コンクール事務局が現地の音楽教育機関を借りるなどして、練習環境を整えています。ただし、その条件はいろいろで、いつでも自由に練習できるところもあれば、あらかじめ時間が決められているところもあります。現地の滞在先については、音出し可能であるかどうかを、かならず事前に確認してください。ピアノの場合は特に、楽器の問題がありますので、滞在先もしくはコンクール会場の近くに別途、個人で練習できる場所を探しておくのもひとつの手です。
 アンドビジョンではご希望に応じて、現地練習室の手配もおこなっております。
渡航準備  ひと言で渡航準備と言っても、滞在ビザの申請、往復航空券の予約、宿泊先の予約、海外旅行保険の加入と、やらなければならないことはたくさんあります。中でも滞在ビザの申請には時間がかかるため、コンクール事務局から申請に必要な書類が届き次第、すぐさま行動に移してください。
 宿泊先に関しては、事務局が用意してくれるのか、それとも指定の宿泊先の予約のみ代行してくれるのか、あるいは自分自身で手配するのかを、まずは確認しましょう。滞在費用についても、事務局の全額負担か自己負担かは、各コンクールによって対応が異なります。

コンクールの先を見据えて

長い音楽家人生を考えたとき、コンクールはひとつの通過点に過ぎません。目先の結果のみに一喜一憂せず、出場したことによって自分はいったいどのような音楽的成長を遂げられたのか、自分に足りないものは何か、逆に自分の良さは何かなど、プロセスのほうにもぜひ目を向けてみてください。
 コンクールごとにそれぞれ、傾向や好まれる演奏のスタイルがあるのも事実かもしれませんが、あまりに結果ばかりを追い求め、コンクール受けする演奏にこだわってしまうと、今度は自分独自の音楽の世界を見失う恐れがあります。コンクールそのものが最終目標になるのではなく、コンクールの一歩先にある未来を見据えて、歩いていくことが大事です。
 世界にはあらゆるコンクールが存在し、優勝や入賞をきっかけとして、音楽界には新たなスターが次々と誕生しています。一方で、優勝したにもかかわらず、その後さっぱり名前を聞かなくなってしまった音楽家も少なからずいます。優勝したとき以上の演奏を今後もずっと続けていけるのか、本当の意味での真価が問われるのはコンクール後であることを、決して忘れてはならないと思います。
 コンクールに対する考え方や価値観はいろいろですが、コンクールがひとつのチャンスであることは間違いありません。私たちアンドビジョンはこれからもずっと、あなたの海外国際音楽コンクールへの挑戦を応援しています。お力になれることがありましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。

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